こんばんにちは、まりこです。
少し前に、池田町の林業従事者さんとおしゃべりする機会がありました。
その時聞けたことが、めっっっっっっっちゃくちゃ面白かったのでマジで聞いてほしい!!!というど直球タイトルのブログです。
どーーーーーん!
ひょ〜〜、かっこいい〜〜〜〜〜!
私がお話ししてきたのは
池田町産クロモジ茶をつくっている「ヒトトモリ」の吉田瑛さん!です!
あ、もちろん写真で切ってるのはクロモジじゃなくて杉か何かですけど。
かなりボリューミーなので、前編と後編に分けてお届け致します。
前編では、こんなことを取り上げます。
・日本の山の現状ってどうなってるの?その中でも池田町の山ってどうなってるの?
・現状を踏まえた森づくりってどうしていけばいい?現実的に何ができる?
(本記事では、林業における多くの考え方や見方のうちのひとつを取り上げています)
間伐率、どう考える?山の価値と目的を見極めろ
間伐率(かんばつりつ)。
そこそこ耳馴染みのある言葉ではないでしょうか。
私たちがよく使う割り箸の多くは、間伐材からつくられていることは有名ですね。
間伐とは、木が成長するにしたがってぎゅうぎゅうになってしまったのを、一部伐採することでより成長しやすい環境にしていくこと。
いわば、木の間引き作業のことを言います。
そもそも間伐のことってどう考えたらいいのか?
間伐率を変えると、どのように山に影響するのか?
吉田さんのお話しを伺いながら、林業の基本のきを学んでいきましょう。
吉田さんは、数ある山の価値のうち「きれいな水を生み出す」場としての価値がこれから重要になってくるのではないかと語ります。
"一般的に林業=木材の生産だけど、そのうち山の価値=木材っていうところが、メインじゃなくなるんじゃないかと思っていて。どっちかというと水。綺麗な水を生み出すところっていうのがメインの価値になる時代じゃねぇかなぁって。
今ね、世界中で求められてるのって水でしょう。水で戦争起こってるわけだし。日本って世界で稀にみる水がすごいところ。衛生環境が悪いところからしたら、日本で車洗ってる水なんて、飲めよっていう水だろうし。"
まさしく。現在、世界の約20億人が安全な飲み水へのアクセスがない状況にあると言われています。
日本にいると当たり前になってしまいますが、蛇口をひねったら飲み水が出てくるというのは世界的にみてかなり恵まれています。
池田町では山水や湧き水を使うこともできます。日本の中でも、大変有り難い状況にあるということに気づかされます。
吉田さんは、池田町が福井県の上流域に位置していることからも、水の価値を考えることが大事だと述べます。
" 山が水をつくるところっていうのがこれからきっと重要になる。最近知ったんだけど、1番質の悪い水っていうのは、針葉樹、杉の山の水っていうのは良くないんだって。硝酸態窒素(しょうさんたいちっそ)って聞いたことあるか?"
初耳ワード、ショウサンタイチッソ・・・。検索検索・・・。
農業で特に問題にされており、化学肥料などを過多にあげていると、作物や土中に硝酸態窒素が溜まるそうな。
それが体内に多く入ると、発がん性があったり、子どもが食べると特に問題なのだとか。本来、酸素とくっつくべきヘモグロビンが、硝酸態窒素とくっついてしまい、子どもの場合は酸欠になりやすいそうです。
さて、硝酸態窒素と杉山の水の関係は・・・?
"硝酸態窒素が土の中にたくさんあるんだけど、杉だけの林は、それを消費できない。結局それが水に溶け込んで、それが地下水として村とか田んぼに流れてくる。
逆に自然に近い形の森だと、硝酸態窒素も消費するんだって。
じゃあ、杉だけの山に、広葉樹をどうやって増やしていくか?
間伐率を5割にすると、光がわって入るでしょ。そうすると林床にある広葉樹が成長して行って、今ある杉と同じくらいの高さとか、あるいはもうちょっと大きくなるくらいに成長する。
結局間伐は、光のコントロールなんやって。だから、より良い水をつくる森にしたいと思うと、そういう間伐があるし。逆に下層植生を育てたいんだったら、2、3割。だけど、間伐率が低いと広葉樹は育たないから、針葉樹と広葉樹の針広混交林になりにくい。"
ガッ!ガーン。ショウサンタイチッソと杉山の関係ってそういうことなのか・・・。
良い水をつくる山にしたいならば、5割間伐をめざしたいところ。
しかし下層植生を育てたいだけならば2、3割の間伐をする。
では「現在林業界でよく行われている間伐は何を目的とし、何割間伐が多いのか?」
聞いてみると「基本2,3割。良い杉材を出すための間伐がメイン」という答えが。
良い杉材を出すための間伐の原理について、とてもわかりやすく教えて下さいました。
"まず杉植えるでしょ。植えたやつを一回も間伐しないでずっと置いておくと、太くなったら隙間が小さくなって光が入ってこんが。じゃあ杉はどうやって光を求めるか?っていうと、上に上に光を求めて成長していくよね。そうすると細くて長い杉になる。そうなってしまうと、北陸みたいなべた雪だと簡単に折れてしまう。
間伐することで、杉がある程度隙間を持った上で大きくなっていける。今はほとんど間伐もできてないから、細い長いのが多いよね。今林業がやってる間伐っていうのは、そういうのが多い。"
より良い水をつくることを目的とするのか?
下層植生が育つことを目的とするのか?
良い杉材を出荷することを目的とするのか?
森づくりは、まずもって目的が超重要である、ということ。そしてその目的を達成できるような間伐率を設定すること。その重要性が、ど素人の私にもすごく伝わってきました。
皆伐は悪者か?何もない山が持つ可能性
ここまで聞いて、私は「吉田さんが今後やっていきたいのは、良い水をつくるための5割間伐か?」と質問してみました。すると「それは、山によって変わる」と柔軟な答えが返ってきました。意外にも「皆伐しても良いと思う」という答えも。詳しく聞いてみましょう。
"やっていきたいのは、山によって変わる感じだね。手入れするの大変だと、自然に近い形に戻した方が良いから、針葉樹と広葉樹の混合林にしてもいいし。
小さい面積だったら皆伐しても良いと思う。皆伐って、皆伐した木を無理くり出すために無理くりつけた道が崩れて土砂災害になるって悪い面ばかりが言われているんだけど、皆伐が全て悪かっていうと、場所とやり方によっても変わってくるだろうし。"
2021年の熱海の土石流が起きた背景に、広範囲の森林伐採があったことは記憶に新しいでしょう。リスクもある一方で、小さい面積であれば、メリットもあるという吉田さん。昔の浮世絵から、皆伐のメリットを読み解いて下さいました。
"いま日本の山って歴史的にみて1番木が多い。戦国時代とかは、お城を立てるために木を切るし、江戸時代の浮世絵見ても、後ろの山って禿山みたいなのが多い。昔ってやっぱり今以上に生活のほとんどを山の木であるとか、そういうものを使っていたから、今に比べたら山の木が少ない。
逆に今は木がわさ〜!ってなってるから、鷹とか鷲が狩りをする場所が減ってるんだって。皆伐するとそういう動物たちにとっては、狩りをする場所にもなる。"
なんて面白いんだろう!!!昔の浮世絵を見る時に、山の描かれ方を気にしたことがありましたか!?
私はなかったので、とても驚きました。今度見る機会があれば、気にしてみようと思っています。
皆伐をすると、鷹や鷲が狩りをする場ができる。その他にも皆伐には生物多様性を保つというメリットも。
"イメージだとさ、手つかずの原生林の方が生物多様性高そうやん?
なんだけど実は・・・遷移ってわかる?自然の状態が移り変わっていく。最初の状態は何もない。草が生えて、木が生えてそれが数年経つと、山菜が取れるようになるとか。もうちょっと経つと木が10m20mとかになる。それを遷移って言う。
遷移していってる森の方が多様性が多いんだって。要は手付かずの森っていうのは遷移しきってる。標高によっても変わるらしいんやけど。だから皆伐も100%悪いことではないと思っています。"
「遷移している森の方が、生物多様性が高い」
そのためには、遷移しきった森を小さく皆伐して、遷移していく環境を整えていく。
皆伐には、そのような良い面があることをわかりやすく教えて下さいました。
森林率が90%を超える池田町。
どんな山にしたいか?どんな山を未来につないでいきたいか?
この問いは、決して他人事ではありません。
そのことについて考えるために、まずは林業林業の現場で手足を動かしている方の声に耳を傾けてみる大事さが身にしみました。
まりこ
(本名 川上真理子)
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大都市で24年間をTO DO(したいこと)ファーストで
生きてきて、大学3年の時に自分の在り方の大切さ
に気づく。
ご縁がありたまたま出会った池田町での
素朴で等身大な人や自然に惹き付けられ
大学院卒業後、新卒無職で池田に移住。
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●池田町見習い人(めざせ何でも屋)
●ローカルとジェンダーに強いライター
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好きな食べ物)ちんころいも※池田町限定
現在、畑仕事や古民家改修により筋肉強化中。