安心安全な食べものはカンタンにはつくれない。
信念を貫いた人々がコツコツと積み重ねてきた歳月。
人々の思いがすこしずつ繋がっていった結果、
『池田町の食べ物=おいしくてヘルシー』と、今まさに人気を集めています。
卵を使ったお菓子作りでタッグを組む、
佐々木農園・佐々木ひとみさんと、コメコロ・溝口香織さんにお話を聞きました!
卵って一つの生命。卵にこだわれるのはすごく幸せ。
溝口 私、お菓子を作るならなるべく池田のもので揃えたかったんですよ。佐々木農園さんが放し飼い鶏の卵を作っているのを知って、飼料もこだわってて、こんないいものはない!と思って使わせていただいてます。
佐々木 他の卵に比べると倍以上の値段するけどね。食べ物はダイレクトに自分の体を作るから。
溝口 卵って、一つの生命でしょ。栄養としてすごく濃い気がする。卵にこだわれるのはすごく幸せ。池田町でそれが揃うっていうのもすごい。
佐々木 今はもう、池田の食べ物は安心安全ってイメージがついてるよね。長い時間をかけてここまで来たんだけど。
溝口 佐々木さんは有機農業の先駆者ですよね。
佐々木 私が移住してきた26年前は、農薬がばんばん使われてた時代。そんな中、農業を始めて、田んぼで雑草を何日もかけて手で取ってたら、近所の人が『除草剤、お店に売ってるよ』って。知らないと思って教えに来てくれたの(笑)。
確かに、農薬や化学肥料を使えば、楽だし、あっという間に大きくなる。でも、私が子供の頃から添加物が入った食べ物も増えてきて、それが私自身ではなく、子供に影響が出だした。もう安全な食べ物は自分で作るしかない、という思いで池田に来た。平飼い鶏を受け継いだのも、その気持ちがあったから。
溝口 できるだけ安全なものを取り入れたいですね。毎日、全部、有機は難しくても、子供にお菓子をつくる時にはこだわりたい。
町独自のルールができて、農業への意識が変わった。
佐々木 食べ物への意識は、池田町全体で変わってきてるよね。「こっぽい屋」(福井市にある池田町のアンテナショップ)ができるにあたって、町独自のルールができたのも大きなきっかけ。農薬や化学肥料をできるだけ使わない農業にみんなで取り組もうという体制になった。そして、作った農作物がちゃんとお金になる仕組みができて、みんなの意識が変わってきた。
溝口 池田のおばちゃん、すごく意識が高いですよね。
佐々木 小さな町だからこそ、そういう特色ができたし、町外の人にもだんだんと池田の食べ物の良さが伝わってきていると思う。
素材本来の味を感じられる昔ながらのプリン。
溝口 春の新作のプリンです。どうぞ、ご試食ください!
佐々木 ・・・美味しい!昔ながらの固めのプリン。甘すぎないのもいい。
溝口 よかった~。プリン自体の甘みは抑えて、子供もおいしく食べれるようにカラメルは苦みを抑えました。
佐々木 プリンって生クリームを入れたりすると生クリームの味になっちゃうけど、これは本来の素材の味がする。
溝口 原材料は卵、牛乳、てんさい糖、といたってシンプルです。香りづけにはオーガニックのバニラエクストラクトを使ってます。せっかく美味しい素材を使ってるんだから、それを生かすプリンを作りたいと思って。小さなお子さんにもぜひ食べてほしいです。
池田に住んで戸惑ったこと、学んだこと。
溝口 自然なものに囲まれていると、五感も敏感になるんじゃないかな。実は私、池田に住むようになってから、よそで農薬の臭いを感じるようになっちゃって。池田はよっぽど空気がおいしいんやと思う。
佐々木 池田は山に囲まれてて、余分なものが入ってこないからね。足羽川も源流だから、水がきれい。だから美味しいお米ができる。
溝口 私、ネパールに行ったこともあるんですが、池田の空気の方が美味しかった。どっか行っては池田が一番と思って帰ってる。子供にも「あんたらいいとこに住んでるんやで」って言ってます。(笑)
佐々木 でも、池田ってすごく田舎と思われてるけど、実際住んでみるとそう不便は感じない。ちょっと一山超えただけで、景色が変わるのもいい。若い人も池田のファンってたくさんいて、池田を好きな人と人が繋がって、広がってる。やっぱり池田って魅力的なんだと思う。
溝口 佐々木さんが来た当初、驚いたことってありました?
佐々木 26年前、京都からここに来た時は、長男が小4で、次男が小1、娘はまだ5カ月。まず、小学校に制服があるってことにびっくりしたわね。あと、小学校入学時にはほとんどの子供が読み書きできてたんだけど、うちの次男坊はできなかった。でも2、3年でガキ大将になってたけどね(笑)。
まあ、子供のアレルギーもあって移住したんだけど、そちらは前進したり後進したり。移住して、次男のぜんそくが良くなってきたと思ったら、小4の時にアトピーが出て。大人になってそれなりに治まってきたけど、当時は『なんで?』という気持ちになった。
溝口 アレルギーって一進一退ですよね。うちの子は今、給食では除去食、頼んでます。佐々木さんのような先人の方々がいたおかげで、今すごく楽になってると思う。
佐々木 まあ、生きてくうえで悪いものを100%除去はできないから、悪いものを排出できるような強い体を作らないとね。そのためにはやっぱり食が大事。何か一つでもいいから、食べ物に気をつければ体は変わる、と私は家族で実感してます。
溝口 私も、子供がアレルギーになったことでいろんなことを学びました。あまりにもストイックになるとそれもストレスになるし、ちょっとゆるいぐらいで食べ物に気をつけるといいんじゃないかなと思います。
自然ってすごい!どんどん知恵がついていく。
佐々木 食べ物もそうだけど環境も大事。池田には自然の環境が揃ってるんだから、それも使わないともったいないよね。子供が小さい頃は、本当に好きなように山や川で遊ばせてた。
溝口 うちの子は川にとにかく行きたがる。自分で釣りざお作って釣りしてるの。餌も自分でミミズを捕まえてきて。すごい野生児になってる。(笑)子供って自然があれば自然で遊ぶし、自分でどんどん知恵をつけていく。自然って『待つ』ことがすごく多いから、待つ力が身に付いてるみたいです。あと、友達と協力し合うようになる。もちろん、ゲームもするけど、自然の遊び方を知ってるのと知らないのでは、全然違うと思う。池田のおっちゃん、おばちゃんって年をとってもすごく体が動いてますよね。山で育ってると体ができてくるんだと思う。
好きな場所に動くし、産卵はまばら。それが自然の姿。
溝口 今、佐々木農園さんには鶏って何羽くらいいるんですか?
佐々木 約400羽。田んぼ仕事もあるので、養鶏は80代の父が中心になってやってくれてます。養鶏はもう辞めようかな、と思ったこともあるけど、福井県が『福地鶏』っていうブランドをたちあげて、もともと平飼いで鶏を飼ってたうちにも声がかかったの。平飼いの鶏って、好きな所を動き回る。日照時間が短くなる冬は、あまり卵も産まなくなるけど、うちはあまり人工的に環境を変えたくない、と思ってます。季節によって毛も生え変わるし、寒い時は集まったり、夏は日陰に移動して土を掘って座ったりして、自分で体温調節してる。それが生き物本来の力だし、自然の営みだと思う。世話する方は毎日休みなしだから大変なんだけどね。
溝口 考えてみたら卵を産むってことは、出産するってことで、鶏にとって大変なことですよね。佐々木さんの鶏は幸せですね。